メディアの信頼度とメディア・リテラシー
最近SNSで見かけた投稿が、情報源としてあるニューヨークの地方紙を挙げてリンクしていた。伝統ある媒体で地元に関連する報道には定評があったのだが、1970年代に海外の巨大メディアに買収された後、ゴシップと扇情的な見出しが売り物のタブロイド紙として生き延びている。SNS投稿がソースとしてリンクした記事の大まかな事実認定については問題がないとしても、私は、細かいファクトチェックや引用コメントの信頼性には疑問を持って読んだ。
日本で国内メディアに囲まれて育った人間なら(特に首都圏で通勤経験があれば)、駅のキオスクで売っているいろいろな国内のタブロイド系や夕刊紙の信頼性には、ある程度のカンが働く。雑誌についても同様だろう。印刷媒体であれば、新聞のサイズや印刷の質からも媒体の素性は推察できた。しかし、ネット版になると、デザインによって多少のアタリはつけられても、見た目でだけでの判断は難しい。
私自身、このブログで紹介する記事の情報源については、いくつかの非公式な条件がある。
1)信頼できるメディアとして、長年認知されていること。私の場合、日本と米国、そして英国のメディアに関しては、自分の経験と知識で判断することが多い。「信頼できる」という要素に、個々のメディアの政治的傾向に偏りがあっても、それを分かって読むなら問題ないと考える。例えば、The New Yorker誌。都会の知識人向けであって、内容は彼らの政治的傾向に沿ったものだ。事実確認や文章(文学作品に限らず、ノンフィクションやコラムも)に関しても質が高い。Mother Jones誌ならもっと左寄りでProgressive Liberal向き雑誌。
2)歴史の浅いメディアであっても、特定分野については専門家や優れたライターを抱えていて、信頼できる編集方針を持っている。これに当てはまる例としては、Wired(The New Yorkerと同じCondé Nast 系列)。
3)自分はよく知らない媒体やライターだが、交流があり(過去に交流のあった)信頼するジャーナリストや学者、評論家を通して知った記事や論文。この場合、それだけで媒体全体を信頼することにはならないが、紹介された個々の記事についてはある程度信用する。例えば、ジャーナリストが運営する新しいテクノロジーニュースサイトの404 Media。
4)面白い記事や切り口なのだが、掲載の媒体やライターについて馴染みがないため、Wikipedia:Reliable sources/Perennial sources の評価を参考にしながら、その他のネット上での評価を参考に自分で判断する。
メディアの信頼性は、新聞や雑誌の経営状態、国や地域の政治状況によっても影響を受ける。以前は質の高い記事を提供していた媒体でも、経営の悪化や経営者が変わることで突然、信頼できなくなることもある。最終的には自分の嗅覚というか、培ってきたメディア・リテラシーで判断するしかない。