米国:中絶反対派の次の狙いは経口妊娠中絶薬の全米差し止め?

Dobbs Was Always Just the Beginning (Slate)

人工妊娠中絶を権利として認めた50年前のロー対ウェード判決は、2022年6月のドブス対ジャクソン判決で覆された。保守派が多数となった最高裁で合衆国憲法は人工妊娠中絶を保障していないという判決が出たのだ。しかし、それは単なる始まりだったのかもしれない。

人工妊娠中絶を全米で禁止することを狙う団体が、経口妊娠中絶薬を全米で違法化する戦略に乗り出した。すでに23年間使われ安全性も確認されているミフェプレックス(MIFEPREX)について、FDAの認可過程に問題があった、将来的に副作用の危険があるなど、言いがかり的な理由で裁判を起こしたのだ。しかも、訴訟が起こされたのは、トランプ前大統領が任命したマシュー・カリスマク裁判官が必ず担当することになるテキサス州北部の連邦地方裁判所。カリスマク裁判官は、LGBTQの権利や中絶に反対の極右保守主義者であると知られている。

狙いは連邦裁判所による経口妊娠中絶薬の差し止め命令だ。ロー対ウェード判決が覆られた後、民主党が強い州では、住民投票などを通じて人工妊娠中絶へのアクセスが確保された。しかし、連邦裁判所の差し止め命令により、全国で経口妊娠中絶薬を処方できなくして、中絶が合法な州においても、より危険な中絶手術に頼らざる得ない状況を作り出すのが目的のようだ。