途上国向けコロナワクチンの大量余剰。製薬会社は先払い分の返金渋る

Vaccine Makers Kept $1.4 Billion in Prepayments for Canceled Covid Shots for the World’s Poor (New York Times)

コロナワクチン需要が急減少するなかで、世界の貧しい国々でワクチン接種を進めてきたGaviワクチンアライアンスは、WHOの主導で始まった新型コロナウイルスワクチンを共同購入し発展途上国などに分配する国際的な枠組みCOVAXのために製薬会社とのワクチン購入契約のキャンセルや見直しを迫られている。

ニューヨークタイムズ紙が入手した機密書類によると、製薬会社は、キャンセル分のワクチン代金の先払いとして受け取った14憶ドル(1800億円強)について、返金する意志がないことがわかった。

ジュネ―プに本部があるGAVIは、各国政府やビル&メリンダ・ゲイツ財団のように子供の予防接種に力を入れる慈善団体等からの寄付により運営されるNGO。パンミック初期には、製薬会社が裕福な先進国に優先してワクチンを割り当てたことなどから、ワクチン確保に大変苦労した。GAVIが潤沢にワクチンを受け取れたのは2021年後半になってからで、その頃には途上国の需要も減り始めていた。COVAXは世界各国の人口70%に予防接種を行うという目標に届かないまま、プログラムは終了に向かっている。

契約上、製薬会社はキャンセルされたワクチンに対する返金の義務はないが、公衆衛生の専門家からは、製薬会社の姿勢への批判も出ている。

書類によると、COVAXは146 カ国に対して、19億回分のワクチンを送った。また、製薬会社全体でCOVAX経由で流通したワクチンからは138億ドル(約1兆7,917億円)の売り上げがあった。そのうち半分以上はGAVIが直接購入したもので、残りは先進国からの寄付による。