雑誌出版大手、コンデナストの興亡を追った新刊
先週ランニングしながら聴いたNPRのFresh Airインタビュー。ニューヨーク・タイムズ記者のマイケル・グリュンバウム(Michael Grynbaum)氏が、米国雑誌界に君臨してきたコンデナスト(Condé Nast)の興隆と衰退を追った新著「Empire of the Elite: Inside Condé Nast, the Media Dynasty That Reshaped America」(エリート帝国:コンデナストの内幕-米国を変えたメディア王朝)を語る。長きに渡り米国のファッション、文化の流行をリードしてした雑誌にも陰りが見える。「人々は以前にように紙の雑誌を読まなくなった。ヴォーグは今でもなお世界的に知名度の高いブランドだが、流行りのファッション情報は、星の数ほどのインフルエンサーやSNSでのやりとりから得るのが主流になった」。この本で、グリュンバウム氏は、ヴォーグ、ニューヨーカー、GQ、などのコンデナストの雑誌が20世紀に長くに渡り「Tastemakers」(ファッションに限らず、あらゆる文化、そして政治潮流までのオピニオンリーダー)として米国の流行やトレンドの震源としての大きな影響力を持ってきた内幕を解き明かす。
マンハッタンのしゃれたオフィスで働く編集者たちは、各界のエリートたちを取材するだけでなく、自らもその輪に入り込むある種のスターだった。有力編集者には年間かなりの額の衣装代が支給されていて、彼らは取材相手に負けないほど最先端のおしゃれだった。そして、リムジンで取材先に出向き、コンデナストは有名人を集めたパーティーを主催し、そこで編集者は彼らとの親交を深める。彼らの記事は、物質主義と大量消費がもてはやされた時代に乗っかり、都会のアッパーミドルの生活に憧れる層をとりこにした。また、コンデナストはトランプがまだ無名の頃から度々大々的に取り上げ、ニューヨークの不動産屋から全米有名人へと駆け上る手助けもしている。今では当たり前に知られているけれど、GQは最初からゲイ読者に向けた雑誌だった。マールボロ・マンで知られるタバコメーカーの広告担当者は「私たちのカウボーイとあなた(GQ)のカウボーイは、違うものだから広告は出せない」と語った。
How did Condé Nast go from dominance to decline? A new book explains (Fresh Air/NPR)