エコノミスト誌:日本政治は無秩序な新時代へと突入しつつある

石破首相が地味な色のスーツ姿でカンペを読みながらガソリン値下げを約束するTikTokビデオ、若者にウケる要素がない。長く政権の座にある自民党(LDP)は、6月20日の参議院選挙を前に、ソーシャルメディアから情報を得る世代が多数派となった無秩序な新しい世界に対応しようとしているが、新しい時代の波に乗るのは無理のようだ。2022年の安倍元首相の暗殺により、党と統一教会の強い繋がりが表面化、さらには裏金問題で有権者の信頼を失い、いくつかの派閥は解散に追い込まれた。昨年の衆院総選挙で公明党との連立はすでに過半数を割った。参議院選の結果次第で石破氏は退陣に追い込まれる。

むちゃな主張であっても、明確な政見を掲げる新しい小さな政党が、支持を広げている。「ジャパンファースト」の参政党や関西の維新が、自民党を右翼側から攻撃している。それらの中で最も成功している党が、昨年の衆院選で議席を4倍の28に伸ばした国民民主だ。国民民主は政権に協力していくつかの法案を成立させた。党首、玉木雄一郎氏の若い働く世代の支持獲得に注力する方針により、40歳以下の有権者には自民党を上回る支持を得ている。自民党はSNSなど新メディアの活用で苦戦。最近まで他の先進国に比べて、高齢化が進む日本はSNSの政治への影響が小さかったが、変革が押し寄せたのだ。20代で国営テレビ、NHKを信頼すると答えたのは40%を割った。ユーチューブでは、国民民主は自民党の2倍の登録者を持つ。

長期低落傾向の続く自民党は、若手首相を抜擢するなら、ブランド一新ができるかもしれない。もう一つのシナリオは、不安定な連立政権が長引き、短命政権が続くというもの。その場しのぎのバラマキや減税で財政がさらに悪化し、少数与党政府は、軍事費増額など予算交渉に頭を抱えることになる。その先には、さらに不透明、不確実な時代が待っているかもしれない。
Japan’s politics is entering a messy new era (Economist)