米国:議会が補助金打ち切り可決すれば、地方の公共放送はなくなる?
トランプ政権は、公共メディアであるPBS(Public Broadcasting Service=公共TV局)やNPR(National Public Radio)が、偏向した内容であるとして、以前に議会で可決された補助金を含め、議会に働きかけ、すべての援助を止めるようとしている。米国の公共放送の資金は、主に視聴者や企業からの寄付、そして国からの補助金だ。国からの補助の停止は、全体運営に大きな影響を与えるだけでなく、視聴者の少ない(=寄付の集め難い)地方局にとっては死活問題。教会運営の局を除くとNPR地方局しかないアラスカ州の保守的地域の局長へのインタビュー。NPR本部が系列局向けに制作する全米ニュース、そして音楽・文化番組は、ここでは都会向き、切り口もリベラル過ぎて評判が悪い。住民の多くはLGBTQを扱ったもの聴きたくないし、マスク着用を薦めるコロナ対策が連日報道された後は、住民からの寄付が減ったとも。しかし、高速ネットアクセスが可能な地域に住む住人は極少数で、今でもここではネットではなくラジオが、天気情報などで一番頼りになるメディアだ。国の補助金でこの局は運営費の30%を賄ってきた。それがなくなると、6人体制からさらに人員削減し、自局制作番組も大幅に減るのは避けられない。公共放送への補助金カット一番困るのは、都会のリベラルではなく、共和党の基盤、アメリカ田舎の保守系な人々なのだ。
Is Congress About to Kill This Local Radio Station? (New York Times/The Daily)
このポッドキャストの冒頭で流れたトランプ支持保守層向けの公共放送への補助打ち切りへの賛同を求めるメッセージ。「NPRとPBSは近年、富裕層の白人、都会に住むリベラルと進歩派のための過激な左翼のエコーチェンバーになっている。彼らは一般的に田舎に住む人々を見下し、バカにしている」残念ながら、、トランプ派の主要な政治戦略、教育レベルで米国社会の二極化を進めた結果、この意見は多数派(=Less Educated)に受け入れられやすい。彼ら(Less Educated)の中には単にリベラルを困らせたり、仕返しをしたいためにトランプ支持をしたものも多い。健康保険カット、移民排斥、富裕層優遇などで苦境に陥っているが、それを認めることがなかなかできないようだ。
連邦補助がなくなったら、NPRとPBSはどうなる? 元のポッドキャストがアラスカの地方NPR局の実例だったのに対して、こちらは法案が上院を通った場合の影響を分析。秋以降、補助金カットの影響が出てくる。 補助廃止に賛成派は“coalesced around the progressive worldview,”(進歩的な世界観に寄り添っている)、偏向したメディア、人種やジェンダー問題を取り上げすぎ、であり、インターネットにより地方局の必要性も減ったと。
What Would Funding Cuts Do to NPR and PBS? (New York Times)