少子化対策、中国のお手本はスウェーデン?
Can China Reverse Its Population Decline? Just Ask Sweden. (New York Times)
昨年中国は85万の出生数減少を公式に認めた。出生率低下と海外移民などの要因で人口が減少しているイタリア、ギリシア、ロシア、東ヨーロッパと南ヨーロッパ諸国、韓国や日本といった東アジア諸国に仲間入りした。
これまでの歴史を見ると、一度人口減少に向かった国では政府の力でそれを増加へ反転される方法はほとんどない。中国の場合、まだ比較的若い人口があるため、出生率が低下しても人口減少に転じるには時間がかかりそうだ。高齢化が進むことで、若い働き手を求める多くの先進国と同じ方向へ進むのは確実だ。
米国やドイツは比較的低い出生率でありながら、流入する移民に頼ってきた。しかし、中国のように移民として外に出ていくほうが多い国では、より多くの赤ん坊の数が必要だ。
出生率を高める方法は限られている。家族に多くの子供を持つように仕向ける政策(現金給付、育児休暇、無料や補助金による託児所など)はどれもお金がかかるが、効果はしばしば限定的だ。オーストラリアは6000米ドルの「ベイビーボーナス」制度で出生率回復を図ったが、1.8だった出生率は一時的に2まで回復(移民を除くと、人口を維持するには人口置換水準の2.1が必要とされる)したが、プログラムの終了6年後の2020年には1.6まで減少した。
オーストラリアの専門家は政策が失敗であったことを認め「出生率を上げるためには、国民が自分たちが望む家族サイズの実現を阻害している要因を取り除くことが必要だ」と。社会保障、雇用制度、その他基礎的経済要因を変えていく政策が最も効果的だと多くの専門家は考える。
フランス、ドイツ、スウェーデン、デンマークなど北欧諸国は、政府が助成する育児ケア、育児休暇などの政策で出生率低下に歯止めをかけることに成功した。しかし、人口置換水準の2.1まで回復できた国はない。
出生率回復のお手本とされるスウェーデンは1970年代に9カ月の育児休暇を制度化(現在は16カ月)、80年代には一定の期間内に複数の子供を持った母親へボーナスを与え、1.6から1990年までに人口置換水準をかすかに超えることに成功した。しかし、その後再び減少に転じている。その後の調査によると、一時的な増加は、経済的インセンティブにより、元々計画していた子供の数を短期間に達成しただけで、全体としての数の増加にはつながらなかったことがわかった。特定学年の子供の数が多くなったため、教育現場への弊害もあった。
今、少子化対策に最も力を入れているのはハンガリーだ。右派で独裁的民主主義政権を率いるオルバーン・ヴィクトル 首相の元、GDPの5%を出生率増加のために割いている。税制優遇や出産で帳消しにできるローン、不妊治療の無料化などを提供。欧州でも最も低い国のひとつだったハンガリーだが、1.2だった出生率は、オルバーン政権下で1.6まで増加した。
世界全体としては、人口置換水準の2.1を超えている。先進諸国の多くにとって、移民受け入れが人口維持の近道となる。歴史的に移民に頼ってこなかった日本ですら、パンデミックまでは数は少ないものの、移民は着実に増えていた。
移民に頼らない場合、両親がキャリアを追求しながら子供を産み、育てられる実践的で非強制的な制度が必要になるだろう。同時に60代、70代が働き続けられる政策が重要だ。